ウサギをセボフルラン麻酔群、フロポフォール麻酔群、セボフルラン麻酔+イントラリピッド持続静注群に分けて、15分間の脳虚血後再灌流を行い、脳軟膜血管径を測定した。研究に先立ち、麻酔の効力を確かめるため、セボフルラン、プロポフォール麻酔での脳波で麻酔深度を推定するBispecrtal indexを測定し、ウサギの麻酔に適当な濃度と持続投与量を得た。研究では、ウサギの頭頂部にクラニアルウインドウを作成し、脳軟膜動脈径を測定した。脳虚血は右腕頭動脈、右総頸動脈、右鎖骨下動脈を遮断することで作成した。脳虚血の最中脳血流がないことは、レーザー血流計で確認した。脳虚血・再灌流後、脳動脈は、虚血後10分をピークとした一過性の拡張を示した後、プロポフォール麻酔群で有意に収縮した。セボフルラン麻酔群、セボフルラン麻酔+イントラリピッド持続静注群では、収縮傾向は認められたが、有意な収縮ではなかった。脳虚血・再灌流時の平均血圧、血糖は、セボフルラン麻酔群、セボフルラン麻酔+イントラリピッド持続静注群で安定していたがプロポフォール麻酔群では有意な上昇が認められた。プロポフォール麻酔群では、虚血後の脳梗塞、肺水腫により脱落する例が多く認められた。 遅発性低灌流は、脳傷害の一因と考えられていることから、プロポフォール麻酔は、虚血が予想される麻酔時には好ましくないと考えられる。さらに、プロポフォール麻酔群で虚血後、再灌流が起こらず脳梗塞をきたした例も認められることから、脳虚血・再灌流時には、セボフルランによる麻酔が有用であることが本研究から示唆された。 本研究では、脳虚血が予想される手術時には、セボフルランによる麻酔が有用であることを明示したことが重要な意義である。
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