研究概要 |
短時間作用型β_1遮断薬ランジオロールの心筋保護作用に対する麻酔薬の早期および遅延期心筋保護作用の影響を検討した。ウサギを用いてs(+)-ketamine, xylazineにて麻酔維持し,左冠動脈鈍縁枝を30分閉塞後180分間の再灌流を行った。遅延期セボフルラン群(Sev L群:n=8)はセボフルラン0.5MACを30分間吸入させ24時間の回復期間をおき,早期セボフルラン群(Sev E群:n=10)はセボフルラン0.5MACを冠動脈閉塞60分前より30分間吸入した。コントロール群(C群:n=7)を除くランジオロール単独群(L群:n=6),Sev L群,Sev E群においてはランジオロール20μg/kg/minで静脈内持続投与した。実験終了後,心臓の横断スライスを作成1% triphenyl-tetrazolium chlorideで染色し心筋梗塞領域,梗塞危険領域および全左室の重量比を計測した。心筋梗塞/梗塞危険領域比(mean±SE)はK群:59±4%,K+L群:42±11%,Sev L群:41±4%,Sev E群:33±3%と,K群と比較しK+L群,Sev L群は心筋梗塞範囲が小さく,Sev E群ではさらに有意に減少した。 研究に同意の得られた心拍動下冠動脈バイパス術患者20名を対象とし,セボフルラン群(10名)およびプロポフォール群(10名)に分類し麻酔維持した。局所壁運動の連続的モニターと心電図のST-T解析を行った。麻酔導入前,手術終了直後,4時間後,18時間後にトロポニンI,トロポニンT, CK-MB, HFABPをそれぞれ測定した。セボフルラン群で2例がプロポフォール群では4例が,心電図上心筋虚血エピソードを示した。トロポニンI,トロポニンT, HFABPは両群ともに手術終了以降に有意に上昇した。手術18時間後のトロポニンT値はプロポフォール群がセボフルラン群に比べて有意に高かった(0.47±0.1 vs. 0.23±0.04ng/ml, mean±SE)。ランジオロールの心筋保護作用はセボフルランの早期心筋保護効果によって増強されることが動物実験および臨床において示唆された。
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