研究課題/領域番号 |
18591709
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
十時 忠秀 佐賀大学, 医学部, 教授 (20038722)
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研究分担者 |
森本 正敏 佐賀大学, 総合分析実験センター, 助教授 (90136482)
高崎 光浩 佐賀大学, 医学部, 助教授 (70236206)
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キーワード | 局所麻酔薬 / 神経障害 / アミトリプリチン / 分子会合 / 可溶化 / 溶血 / ニューロメーター / ラット |
研究概要 |
(目的) 局所麻酔薬による神経障害は臨床上大きな問題となっているが未だその機序は明らかではない。我々は、薬剤の有する界面活性特性による神経細胞破壊がその機序であるとの仮説を立て、これまで数種の局所麻酔薬について、界面活性特性発現濃度(分子会合濃度、リン脂質モデル膜可溶化濃度)と神経障害発現濃度が一致することを報告した。今回、抗うつ薬であるアミトリプチリンが引き起こす神経障害に注目し、アミトリプチリンの界面活性特性発現濃度と神経障害発現濃度が一致するかどうかを調べた。 (方法) アミトリプチリンの水溶液中の分子会合濃度、人エリン脂質モデル膜破壊濃度、ヒト赤血球破壊濃度をそれぞれイオン電極法、光散乱強度測定、吸光度測定から求めた。また、持続脊椎麻酔モデルラットのくも膜下腔ヘアミトリプチリンを投与して4日後に神経障害が認められる濃度を求めた。神経障害はニューロメーターで測定された経皮的電流刺激閾値(CST)の変化から評価した。 (結果) アミトリプチリンの分子会合濃度、リン脂質モデル膜可溶化濃度、赤血球破壊濃度はそれぞれ0.46%、0.35%、0.3%でありラットに不可逆的神経障害を起こすアミトリプチリン濃度(0.3%≧)と一致した。 (結論) 三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンは近年長時間作用の局所麻酔薬としての可能性が研究されてきたが、その強い組織毒性が認識されるようになり局所麻酔薬としての期待が小さくなった。しかし、なぜアミトリプチリンが強い毒性を持つのか明らかにされていない。今回の研究結果は、我々が局所麻酔薬による神経毒性の機序として提唱しているようにアミトリプチリンの組織毒性(神経毒性)も薬剤の界面活性特性に基づく可溶化による生体組織や細胞破壊であることが強く示唆するものである。なお、本研究計画で18年度に予定していた局所麻酔薬による可溶化現象の電子顕微鏡での観察は現在進行中である。
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