研究概要 |
(アミトリプチリンの神経毒性メカニズムの解明)アミトリプチリンによる不可逆的神経障害の原因をそのデタージェント作用による膜破壊であるという仮説を検証するため, (1)アミトリプチリンの分子会合濃度の定量, (2)モデル膜を破壊するアミトリプチリン濃度の滴定, (3)赤血球を破壊するアミトリプチチン濃度の滴定, 及び(4)ラットくも膜下腔への投与によって不可逆, 的神経障害をもたらすアミトリプチリン濃度の定量を行った。 アミトリプチリンの分子会合濃度, モデル膜破壊濃度および赤血球破壊濃度はそれぞれ0.46%, 0.35%, 0.3%であった。またラットの神経障害はアミトリプチリン0.3%以上の濃度で認められた。 アミトリプチリンの分子会合濃度, 膜破壊濃度および不可逆的な神経障害をきたす濃度がほぼ一致することからアミトリプチリンによる神経障害の機序はそのデタージェントとしての物性に深く関連していると思われた。 (ケタミンの神経毒性メカニズムの解明)ケタミンによる不可逆的神経障害の原因にデタージェント作用による膜破壊が関連しているかどうかを検証するため, (1)水溶液中でのケタミンの分子会合濃度の定量, (2)赤血球を破壊するケタミン濃度の滴定を行った。 ケタミンは0.1~2.5%の濃度範囲においては分子会合体を形成しなかった。また, 2.5%までの投与では溶血は認められなかった。このことから, ケタミンによる不可逆的神経毒性の発生機序は, 可溶化によるものではないと推察された。
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