研究概要 |
Kira S, Noguchi T, らは軽度低体温がラット誤嚥モデルで炎症を軽減し、抗炎症効果を有することを報告し、従来から行っていた研究を発展させ2006年Ventilator induced lung injulyは炎症反応の一種と報告した。また、中等度の温度変化が培養細胞で炎症刺激に対するサイトカインと炎症性メディエイターに与える影響を報告した.これはマウスマクロファージ系細胞RAW264.7細胞50X10^4/ml調整LPS100ng/ml添加・5%CO2下で培養温度を34□、37□、40□、43□を選択し、3時間後に細胞回収、核蛋白抽出ウエスタンブロットでNF-κB活性を測定、6,12,24,48時間における細胞培養上清のIL-1β、IL-6、TNF-αを測定し、48時間後の細胞活性を測定した。1.NF-κBは37□に比較し34□、40□、43□で抑制され34□での抑制が強かった。2.IL-1βは37□で12時間後に20pg/ml、24時間後に90pg/ml、48時間後に120pg/mlまで 上昇したが、34□、40□は12時間以後の上昇は見られなかった。3.IL-6は37□で6時間後は290pg/ml上昇、以後400pg/mlで推移したが、34□、40□では200pg/ml程度に抑制された。4.TNF-αは37□で6時間後に400pg/ml、48時間後に800pg/ml程度まで上昇したが34□、40□では200pg/ml、400pg/mlであった。4.生細胞/総細胞数は45-49%で温度による差は見られなかった。LPS刺激時のサイトカイン産生能は、高温時・低温時のどちらのときも抑制される傾向が認められ、これは細胞内伝達物質の一つであるNF-κBの抑制によることが示唆された。以上の2報告より臨床的に使用可能な温度の軽度低体温がVILIを軽減できる可能性があると考えられた。またこれらの研究と敗血症や虚血再還流障害などの動物モデルで各種薬剤の治療効果を検討し、その有用性を報告してきたが特にPDE III阻害薬とプロテアーゼ阻害薬はオルプリノン、ナファモスタットメシレートが動物実験で有用性が確認されているため、炎症反応が成因のVILIに対して有用であろうと考えられた。
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