難治性の慢性疼痛の機序として重要なミクログリアのP2X4受容体機能についてパッチクランプ法を用い、電気生理学的研究を続けた。平成21年度の途中、ミクログリアセルラインGMI-R1で少数の細胞で認めていた微小なP2X4受容体電流の記録が困難となった。そのため九州大学大学院・薬学研究院・薬理学分野教授の井上和秀先生に指導を仰いだ。P2X4受容体発現を増やすためフィブロネクチン処理を行なったが、電流の増加を認めず、GMI-R1ではフィブロネクチンによる発現増加は少ないと考えられた。そこでP2X4受容体発現の多いミクログリアセルラインBV-2を分けていただいた。BV-2では細胞10個中約3-4個に、低濃度ATP (100μM)で誘起する電流を認めた。P2X4受容体刺激作用のあるイベルメクチンでの著明な増加し、P2X7受容体ブロッカーbrilliant blue Gで抑制されないことよりP2X4受容体電流であることが確認できた。P2X4受容体電流記録の条件を調整し、GMI-R1で認めた一部の静脈麻酔薬による抑制効果を含めて、麻酔薬、鎮痛薬の作用について評価・確認を行なう予定である。 ミクログリアの食作用に重要と考えられているプロトンチャネルの記録をまた並行して行った。局所麻酔薬(リドカイン、ブピバカイン)によるプロトンチャネル抑制作用という興味深い結果が観察されたので、詳細に検討した。ブピバカインのほうがリドカインより強く抑制した。逆転電位の変化を検討した結果、局所麻酔薬が細胞内のpHを変化させることが抑制のメカニズムの1つで、それ以外の機序も存在することが示唆された。またイオン化のリドカイン誘導体QX-314では全く影響を受けないことから、局所麻酔薬は細胞膜を通過して作用することが明らかになった。局所麻酔薬は免疫・炎症作用を抑制するが、今回の結果はそれを支持する一面と考えられた。
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