研究概要 |
モルヒネ急性投与後にラット脳内におけるDセリン合成酵素のセリンラセマーゼ(Srr)およびDセリン分解酵素のDアミノ酸酸化酵素(DAO)の遺伝子発現変化を解析した。また、下行性疼痛抑制経路におけるオピオイド受容体、NMDA受容体、ベンゾジアゼピン受容体との相互関係を明らかにする目的として、モルヒネ(オピオイド受容体アゴニスト)、Dセリン(NMDA受容体アゴニスト)、ミダゾラム(ベンゾジアゼピン受容体アゴニスト)、フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体アンタゴニスト)用いて、モルヒネおよびDセリンの鎮痛作用に対するミダゾラムの作用を検討した。その結果、 1.モルヒネ(10, 20, 40mg/kg)の腹腔内投与により、Srr mRNAおよびDAO mRNA発現量がいずれも増加した。その発現のピークは投与後4時間目であること 2.初代培養細胞ならびにラット脳組織を用いたin situ hybridization法によってDセリン合成酵素のSrr mRNAは神経細胞で主に発現していること 3.Dセリンは脳室内投与により鎮痛作用を有すること、モルヒネの鎮痛効果を増強すること 4.ミダゾラムは、モルヒネおよびDセリンの鎮痛作用を減弱すること、などが明らかとなった。 以上の結果より、神経細胞由来のDセリンがAutocrineによりNMDA受容体活性を亢進し、下行性疼痛抑制経路において鎮痛効果を増強すること、モルヒネの急性投与時にDセリン代謝関連遺伝子の発現量が増加すること、またDセリンの鎮痛効果はベンゾジアゼピン受容体ならびにオピオイド受容体と協調し、調節することが示唆された。
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