研究概要 |
吸入麻酔薬セボフルランを用いた長時間麻酔によるラットの体内遺伝子発現変動をマイクロアレイ法にて検討した結果を解析し,脳および肺において変動した遺伝子を確定した。その遺伝子群について,(1)脳内における日内変動遺伝子を標的とし,セボフルランによる麻酔の影響を調べるために,麻酔前,麻酔6時間後,覚醒6時間後,12時間後,24時間後の各遺伝子発現変動をrealtime RT-PCR法を用いて定量的に測定した。(2)肺内における肺血管拡張・収縮物質遺伝子発現,特にガス状モノオキサイドに対する,セボフルラン麻酔の影響を調べるために,麻酔前,麻酔6時間後,覚醒2時間後,6時間後の発現変動をreal time RT-PCR法を用いて定量的に測定した。 (1)7つの脳内日内変動遺伝子はマイクロアレイ法と同様に6時間のセボフルラン麻酔で発現が有意に増加した。これらの遺伝子は覚醒後6時間では増加率が漸減し,24時間後ではほぼ麻酔前の発現率に復した。麻酔が日内変動遺伝子に影響することおよび麻酔覚醒後もしばらくの間その影響が続くことを確認した。 (2)肺内血管作動性物質の遺伝子発現につき,ET-1,NOS-1,2,3,HO-1,2,CGRP,ADM,VIPを測定したが,ET-1,NOS-1,NOS-3,ADMにおいてセボフルラン麻酔により発現率の有意な増加が観察され,覚醒2時間後にはほぼ麻酔前の値に復した。吸入麻酔薬が遺伝子発現に影響する肺血管作動性物質の特定および,これらの影響が麻酔覚醒後短時間で速やかに回復することを確認した。
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