雄性SDラットから直径200μm以下の腸間膜動脈を摘出し、血管標本の両端に微小ガラス・ピペットを挿入した。内圧を一定に保ちながら、顕微鏡に装着した収縮計測用CCDカメラにて血管内径の変化を測定・記録した。 (1)α受容体刺激薬フェニレフリンを累積投与し、血管径の変化を観察した。内皮除去では収縮反応が増強されたが、L-NAMEおよびインドメタシンの前投与で内皮由来拡張因子(EDRF)を阻害した状態では収縮反応は増強されず、内皮由来過分極因子(EDHF)の標的であるカリウムチャネルを阻害したときにのみ増強された。1μM以上のフェニレフリン投与で生じる律動運動はEDRF阻害状態でも観察され、カリウムチャネル阻害薬で消失した。このことから、微小腸間膜動脈の運動にはEDRFよりもEDHFが重要な役割を果たしていることが示唆された。 (2)敗血症6時間後のラットから摘出した標本では、収縮反応は減弱し、律動運動は消失していた。対照群と異なりEDRF阻害状態で収縮反応は増強した。このことから、敗血症早期ではEDHF機能が障害を受け、EDRFが代償的に働くことが示唆された。 前年の研究では、鎮静薬プロポフォールはEDRF阻害状態でもフェニレフリン投与時の律動運動の振幅を増強することを観察し、プロポフォールがEDHFの作用を増強する可能性が示唆された。このことから、今年度は早期敗血症段階における微小腸間膜動脈のEDHF機能障害がプロポフォールで回復するか否かを観察する予定である。
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