研究概要 |
理想の局所麻酔薬は、作用発現開始が速やかで、副作用が少なく、作用時間の調節性に富んでいるという3条件を満たす必要がある。新たな局所麻酔薬を創製するのは、毒性、調節性の問題から臨床応用の実現は低い。一方、世界的動向として、リポソームや高分子ミセルなどを薬物キャリアーとして利用し、既存の局所麻酔薬の作用発現を変化させることが試みられている。本研究は、環状オリゴ糖構造のシクロデキストリン(以下CyDと略)の緩徐な薬物放出特性に注目し、新たな薬物到達システムを開発するものである。ホスト分子のCyDには親水性分岐型である6-0-maltosyl-CyD(124.48g/ml)を選択し、本来難水溶性であるゲスト分子のリドカインと包接結合させ親水性化合物とした。凍結乾燥し、使用直前に蒸留水で溶解する。雄性ラットに1.5%イソフルラン+純酸素にてマスク麻酔を施行し、25G絶縁針と定電流低周波電気刺激器を使用し坐骨神経を同定し、リドカイン、リドカイン+CyD、CyDを3群に分けて投与し、ホットプートにて56℃の熱刺激を与え、後肢の逃避時間を測定する。平成18年度より開始した本研究は、19年度にサンプル数を増やし、リドカイン+CyDの局所麻酔効果がリドカイン単独のものより長いことが明らかに出来た。よって、19年度はこの結果を国際学会であめXXVI Annual Congress of the European Society of Regional Anaesthesia & Pain Therapy2007, Valencia, Spainにて成果を発表した。
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