本研究は、神経伝達ネットワークモデルである「多経路多単位系モデル(Multi-Unit and Mult i-Path System Model、以下MUMPSモデル)」を発展させ、麻酔関連薬物の相互作用の機序を明らかにすることを目的とした研究である。 研究期間中に、(1)麻酔関連薬物間の相互作用様式(相加的、相乗的、拮抗的相互作用)を表現するためのモデルとして、MUMPSモデルを発展させた神経ネットワークモデルの一般式を導いた。 (2)その数学的性質を検討した。 (3)健常成人ボランティアを用いて収集した研究データ(海外)を解析し、従来行われてきた解析モデル(Greco Model)との比較検討を行った。50%効果濃度においては両モデル間に推定における有意な差は見られないという結果を得た。 (4)二つの薬物の相互作用をそれぞれの薬物の濃度反応曲線から予測する方法を示した。これにより、臨床上未経験または研究データがない薬物の組み合わせの相互作用を予測することが可能となった。 今後も多種類の薬物相互作用の臨床データとの比較検討を行い、相互作用に関する実験データがない薬物の組み合わせに関しても推定可能な神経ネットワークにおける薬物作用マップの作成することにより、安全で臨床麻酔管理に貢献できると考える。
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