近年の本邦における食生活の欧米化が一因と考えられている前立腺癌の増加傾向の対策として、食生活環境の観点から、日本人の微小な潜在癌の臨床癌への進展について分子予防医学的見地から解明することは急務である。食生活の欧米化の指標として、レムナント様リポ蛋白(RLP)コレステロールとRLP-トリグリセライドの測定を行った。対象は、1992年〜2005年の前立腺癌検診受診者の中から、初回受診時のPSA値が4ng/ml以下で、その後少なくとも3回の検診を受診し前立腺癌が診断された25症例(症例群)と、年齢(±2歳)およびPSA基礎値をマッチ(±0.2ng/ml)させた非前立腺癌症例25例(対照群)である。RLP-コレステロールとRLP-トリグリセライドは、症例群においては初回検診受診時、癌診断時、対照群においては検診初診と直近の検診受診時の凍結保存血清(-70℃保存)を用いて測定を行った。RLP-コレステロールの平均値は、初回検診受診時においての症例群で33.9mg/dL、対照群で26.8mg/dL、症例群の癌診断時には27.6mg/dL、対照群の最終受診時には20.8mg/dLであり、いずれも症例群で高値であったが、統計学的な有意差はなかった。RLP-トリグリセライドの平均値は、初回検診受診時においての症例群で46.2mg/dL、対照群で44.6mg/dL、症例群の癌診断時には48.6mg/dL、対照群の最終受診時には39.1mg/dLであり、症例群においては、癌診断時においても高値が持続していたが、統計学的な有意差はなかった。統計学的な有意差はなかったものの、初回受診時のPSA値と年齢の条件が同じ両群において、RLP-トリグリセライドとRLP-コレステロールの持続高値が、癌発症に関係している可能性が示唆された。
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