研究概要 |
ホルモン不応性前立腺癌の新たな治療法を開発していく上で,前立腺癌の再燃メカニズムを解明することは必要不可欠である.以前より,我々はホルモン不応性前立腺癌における分子標的として,転写制御因子NF-κBに着目し研究を進めてきた.近年NF-κBとoncogenesisとの関連が相次いで報告され,NF-κBの活性化が癌細胞の増殖促進,アポトーシス抑制,血管新生誘導,転移能増強を引き起こすことが明らかにされた.前立腺癌においても,恒常的なNF-κB活性の上昇がアンドロゲン非感受性前立腺癌細胞株PC-3,DU145で認められている一方,アンドロゲン感受性前立腺癌細胞株LNCaPでは認めらない.ところがLNCaP細胞においてもアンドロゲンフリーの環境で培養すると,アンドロゲン存在下と比較してNF-κB活性の有意な上昇が認められた.この結果から,NF-κB活性の上昇はアンドロゲン依存性から非依存性への移行に何らかの形で関与していると考えられ,"アンドロゲン除去はヒト前立腺癌細胞株LNCaPにおけるNF-κB活性を亢進させる"ことを明らかにした.次に,アンドロゲン非存在下でも培養,増殖可能なLNCaP細胞(LNCaP-SF)と,恒常的にNF-κBが活性化されているLNCaP細胞(LNCaP-κB)を樹立し,癌細胞の増殖や進展・転移,血管新生,またはアポトーシス等に関連する遺伝子の発現プロファイルについて親株LNCaP細胞と比較した.さらに,NF-κBを標的としたアンドロゲン不応性前立腺癌に対する治療法を確立するため,分子標的創薬,デコイ,ドミナントネガティブ等の遺伝子阻害技術を用いてNF-κB転写活性を抑制し,抗腫瘍効果をin vitroで検討した.
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