研究概要 |
昨年は、急性尿細管壊死のモデルとして薬剤の腎虚血再還流障害を用いて主に治療についてPencillensCCDvideo-microscopy(PLCVM)imaging法を用いて微小循環の観点から、動物実験尿細管周囲血流を介した腎保護作用と機序を明らかにした。今年は急性尿細管壊死の病態解明のため、腎組織の損傷マーカとして尿中L-FABPとKIM-1を選んで、それらと尿細管周囲毛細血管との関連をPLCVM imaging法を用いて、その臨床マーカになり得るかを検討した。その結果、今年度はL-FABP,KIM-1両方での有用性を確認したが、臨床での裏付けが可能であったL-FABPについて報告する。虚血による組織障害時に、脂肪酸結合蛋白は不飽和脂肪酸を運び出し、臓器保護を司っていることが報告されている。そこで我々は腎虚血の尿中のバイオマーカーとしての近位尿細管から分泌されている肝臓型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の役割を評価することを目的とした。我々が開発したPLCVMイメージング技術を用いて血流再開直後の移植腎(生体腎移植n=12)における尿細管周囲毛細血管血流(PTCBF)と比較検討した。1/PTCBFと他の尿中尿細管マーカ(NAG:R=0.53,β 2MG:R=-0.007,α 1MG:R=0.235)は相関しなかったが、尿中L-FABPは相関し(n=12;R=0.933)加えて虚血時間と尿中L-FABPも相関(n=10;R=0.939)を示した。さらに、臨床応用の結果として腎血流再開早期の尿中L-FABPと入院期間もまた相関を認めた。ヒトL-FABPトランスゼニックマウスを30分虚血にした群はコントロール群に比して病理組織、血中BUNの障害が有意に少なく、腎保護的存在している運搬蛋白であることが推測された。腎臓損傷を反映する尿中LFABPは腎虚血と相関し、急性尿細管壊死の臨床バイオマーカとして使用可能であり病態解明の有用性が示唆された。
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