研究概要 |
前立腺肥大症治療の第一選択はα1遮断剤であるが,一定の有効性を認めるものの,長期投与により治療効果が減退することが知られている。我々は,α1遮断剤治療が前立腺の組織構築に及ぼす影響,とくに前立腺間質の線維化に注目して組織学的検討を加えた。 本研究では生検施行例のうち無投薬群21例とα1遮断剤服用群24例,そして術前α1遮断剤により治療された肥大症患者23例の手術組織についてマッソントリクローム染色を施行し,間質における平滑筋細胞と線維組織の比率をコンピュータにて画像解析した。また,ゼノグラフトモデルとして,11症例の手術組織をテストステロン(10mg)を補充した免疫不全SCIDマウスの腎被膜下へ移植し,α1遮断剤投与(7日間)による間質の組織構築の変化について同様の画像解析を施行した。 画像解析により,間質の70%以上を線維が占める高度線維化は無投薬群が4/21例(19.0%),α1遮断剤服用群(生検)で16/24例(66.7%),手術症例では11/23例(52.2%)に認められ,α1遮断剤の服用により間質の線維化は有意に増加することが明らかとなった。一方,筋:線維の比率と,肥大症の組織型(腺優位型,間質優位型,混合型)との間に関連性は認めなかった。ゼノグラフトモデルにおいては,タムスロシンの投与により間質におけるコラーゲン線維の質的および量的な増大傾向が認められる症例(4/11例)が確認された。 以上より,α1遮断剤は前立腺間質の線維化を誘導することが示唆され,α1受容体は間質細胞の分化に関与している可能性が示唆された。
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