研究概要 |
1)淡明腎細胞癌(CC-RCC)臨床検体における腫瘍血管微細構造解析 手術にて得られた25例のCC-RCC組織を毛細血管内皮のfenestrationの数に着目し腫瘍血管の微細構造を電子顕微鏡下に調べたところ、VHL遺伝子変異をもつCC-RCCの腫瘍血管内皮細胞はfenestration数が有意に多かった。(VHL mut. 15.2±5.8/μm^2, VHL wild 2.5±1.5/μm^2, p<0.001) 2)VHL-/-及びVHL+/+RCC細胞株を用いたxenograftの作製と腫瘍血管微細構造解析 VHL-/-RCC細胞株pRC3からのxenograftはVHL+/+RCC細胞株WT8からのものに比べて腫瘍血管内皮のfenestration数は有意に多く(pRC3 19.4±3.9/μm^2, WT83.2±1.0/μm^2, p<0.001)、臨床検体と類似した微小血管環境が再現できていると考えられた。 3)抗VEGF抗体を用いた腫瘍増殖抑制効果と腫瘍血管の消退・形態学的変化についての検討 Bevacizumabの投与によりpRC3からのxenograftにおいて腫瘍増殖抑制効果が認められたが、WT8は抑制されなかった。Bevacizumab投与群のpRC3 xenograftはコントロール群に比べて血管密度が減少し、残存血管のfenestration数は有意に減少していた。(MVD : control 90.4±24.6 vessels/HPF, Bevasizumab 43.2±8.0 vessels/HPF p<0.01. Fenestration : control 17.9±2.2/μm^2, Bevasizumab 2.2±0.8/μm^2 p<0.001)WT8 xenograftの血管密度は変わらなかった。 血管内皮のfenestrationはVEGF依存性の形態学的特徴であり、これまでの検討から、VHL遺伝子変異をもつCC-RCCはVEGF依存性血管を豊富にもち、VEGF阻害剤に対する感受性が高い可能性が示唆された。
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