研究課題
腎細胞癌の新規治療法及び予防法を確立する目的で、腎癌患者を対象としたcase-controlゲノム解析研究による感受性遺伝子候補の検索、候補遺伝子の尿細管上皮細胞における機能・発現解析を行うことを計画した。研究対象者は、非家系腎癌患者群(45名)と性・年齢でマッチングさせた対照群(62名)で、一次スクリーニングとして、様々な薬物トランスポーター遺伝子の一塩基多型(SNP)をPCR direct-sequence法で検討した。その結果、OCT1(SLC22A1)とOAT1(SLC22A6)のSNPsが、連鎖不平衡を伴い、有意に疾患と相関していることが判明したので、同遺伝子についてさらに詳細に検討した。OCT1(SLC22A1)には、12箇所のSNPsと1箇所の8塩基挿入多型を認め、エクソン1-6間に存在するSNPsは有意に連鎖不均衡を生じ、腎癌の発生に関与する多型が存在することが示唆された。ハプロタイプ分析の結果、疾患の有無で出現頻度に有意な差を認めるものがあった。またOAT1(SLC22A6)には、8箇所のSNPsが認められ、エクソン1の非翻訳領域に存在する2個のSNPsが腎癌と関連することが示唆された。両候補遺伝子SNPの組み合わせを考慮すると、その出現頻度がより有意に腎癌との関連性が認められ、発癌性アニオン化合物やカチオン化合物の排泄能の差異が発症に関与することが考えられた。SNPの機能を明らかにするために、対象遺伝子のジェノタイピングをした腎細胞癌培養細胞株におけるトランスポーター遺伝子の発現解析を行ったところ、ジェノタイプと相関する遺伝子発現は認められなかった。また、炎症惹起物質・サイトカイン刺激による発現誘導を比較したところ、ジェノタイプとの相関性は観察されなかった。現在、本課題に関連する全国多施設の参加するゲノム解析研究が進行中であり、本研究のさらなる推進により、新規腎癌マーカーの開発、新規治療標的の検索が可能となることが期待された。
すべて 2007
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