研究概要 |
【目的】過活動膀胱(OAB)の発症には膀胱虚血の関与が示唆されている。Watanabe Heritable Hyper-Lipidemirabbit(WHHLウサギ)の下部尿路機能について検討した。【対象と方法】6月齢、12月齢および24月齢のWHHLウサギ(WHHL群)とそれぞれ同年齢の日本白色家兎(対照群)を用いた。FVC、麻酔下膀胱機能検査、摘出膀胱平滑筋条片を用いての機能実験、内腸骨動脈と膀胱の組織学的検査ならびに膀胱の神経性および非神経性AChとATPの放出量を測定した。【結果】各月齢のウサギにおいて、体重、腎機能、一日尿量、血液パラメーターのうちWHHL群で高コレステロール血症を認める以外差はなかった。WHHL群では12月齢のウサギより排尿回数の有意の増加と1回排尿量の有意の減少が見られ、膀胱機能検査でも、12月齢よりWHHL群で排尿間隔の短縮と1回排尿量の減少、およびnon-voiding contractionが認められた。膀胱平滑筋条片の機能実験では、6月齢および12月齢のWHHL群でcarbacholおよびEFS収縮による反応性の増強が、24月齢では逆に減弱が観察された。24月齢のWHHLウサギでは内腸骨動脈の内腔の狭小化が見られた。また、WHHT,ウサギ膀胱は加齢により膀胱上皮が薄く、平滑筋成分の減少と間質の増加が観察された。S-100蛋白陽性神経は主に平滑筋層内に見られ、6月齢のWHHL群では対照群に比較してすでに減少が観察された。またCGRP陽性神経は主に上皮下に認められ、12月齢のWHHL群では増加傾向が、24月齢では有意の増加が観察された。神経性AchおよびATP放出量はWHHLウサギでは有意に減少した、一方、膀胱伸展に伴う非神経性AchとATP放出量は対照群に比して有意に増加し、その増加率はAchに比較してATPで有意に高かった。【結論】WHHLウサギは6月齢から運動神経の部分的除神経とそれに伴う膀胱平滑筋の除神経後過敏反応が見られることが明らかとなった。また、12月齢以降には知覚C線維の活性化も示唆されるようになり、これが排尿筋過活動に関与している可能性が推察された。今回の結果は、虚血や加齢などに伴うOABの発症過程の一端を明らかにしたものと考えられる。
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