研究概要 |
cDNAマイクロアレイでは、前立腺癌細胞株LNCap・PC3細胞の双方で脱メチル化剤(5-aza-dC)添加後に1.5倍以上発現が増加している遺伝子が18個検出された。adenomatous polyposis coli(APC),multidrug resistance one(MDR1),gkutathione S-tfansferase pi(GSTPI}の前立腺癌におけるメチル化の頻度は病理学的悪性度に相関していたが、喫煙者においても有意に相関が見られ癌化の一因としての喫煙の影響が考えられた。Metallothioneins(MTs)は重金属との結合親和性が高いシスティンリッチな低分子タンパクである。5-aza-dC添加前後のPC細胞株において、各MTsのisoformの発現をRT-PCRにて測定したところMTIGの発現パターンは特徴的であった。早期癌モデルであるLNCapでは5-aza-dC添加前後にMTIGの発現は変化せずメチル化の影響はないと考えられたが、ホルモン非依存性のPC3とDUl45では5-aza-dC添加後にMTlG発現が著明に上昇しておりメチル化の影響を受けていた。そこで臨床検体においてMT13のMSPを試行した結果、MTlGのメチル化陽性はBPHでは63.8%(69例中44例)、PCでは20.9%(177例中37例)に検出され有意差が認められた。代表的なサンプルを直接シークエンスして確認したところMSP陽性サンプルではCG配列部にCのピークが観察された。進行性PCにおけるメチル化陽性の頻度は限局性PCに比べて有意に高かった。また免疫染色ではssDNA陽性細胞数はメチル化陰性群では陽性群に比べて有意に高かったが(各5.99±1.35、4.08±3.58、p=0.011)、PCNA陽性細胞数には差が認められなかった。前立腺癌の進行にMTIGのメチル化が密接に関与する可能性が示唆された。さらに我々は前立腺マッサージ後の尿からDNAも抽出し重亜硫酸塩処理を行い、GSTP1遺伝子のメチル化を測定しをところ、早期前立腺癌60例中13例(感度21.7%)において陽性であった。一方、良性疾患である前立腺肥大症では30例中1例のみが陽性(特異度96.7%)であった。前立腺マッサージ後尿中DNAを用いた前立腺癌診断は技術的に可能でちると思われた。現在、感度の向上に向けて実験を継続中である。
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