研究課題/領域番号 |
18591761
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
中川 昌之 鹿児島大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90164144)
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研究分担者 |
榎田 英樹 鹿児島大学, 大学院医歯学総合研究科, 助手 (80347103)
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キーワード | 尿路上皮癌 / 遺伝子メチル化 / 予後予測 / DNA microarray法 / 癌抑制遺伝子 / 細胞周期関連遺伝子 |
研究概要 |
(目的)膀胱癌をはじめとする尿路上皮癌は非常に再発しやすく、再発を繰り返しながら浸潤癌へ移行していく傾向を有する。われわれはこれまで膀胱癌の浸潤性に関与する遺伝子群の同定を行い、さらにそれらの遺伝子のメチル化の役割について検討を進めてきた。最終的には予後を規定する特定の数個の遺伝子を同定し、それらのメチル化を定量化しスコア化することで、各々の患者の予後予測を行いたいと考えている。 (方法)膀胱癌の浸潤性に関連する遺伝子を同定するために、同意の得られている14例の膀胱癌組織を使用してDNA microarray法を実施した。膀胱癌の14例全例で発現上昇している遺伝子を中心に解析を行った。また同定された遺伝子群の機能分類を行った。さらに特に発現の強かった遺伝子について、摘出組織を用いて免疫組織染色およびreal-time PCRにおいて蛋白レベルでの発現の検証を行い、浸潤度、異型度や臨床病期との相関を検討した。 (結果)正常膀胱組織に比較して1.5倍以上の発現が見られた遺伝子が136個検出された。このうち21個は14例のすべての患者で発現上昇が見られた。また69個の遺伝子に発現低下が見られ、このうち25個は14例全例で発現低下が見られた。これらの遺伝子の機能を分類すると、発現上昇していた遺伝子群では代謝・転写に関連するものが多く、発現低下の遺伝子群では細胞接着・細胞骨格に関連するものが多く含まれていた。またDNA microarray法により解析した遺伝子の中で、特に浸潤癌で表在癌に比べ有意に発現上昇していた遺伝子として、CKS2遺伝子が検出された。この遺伝子はreal-time PCRによる定量試験においても正常膀胱上皮や表在癌に比べ有意に浸潤癌で発現増強が見られた。CKS2は細胞周期を促進する機能を持つことが報告されており、リンパ急性白血病や大腸がんの肝転移との相関が報告されている。またCKS2と複合体を形成して機能するCKS1にも注目し検討したところ、71例の膀胱癌患者において、免疫組織染色およびreal-time PCRにおいて浸潤度、異型度や臨床病期とCKS1の発現度に正相関が見られた。またSKP2も同様な傾向が見られた。一方、癌抑制遺伝子であるp27は膀胱癌の浸潤度、異型度や臨床病期と逆相関がみられた。 (結論)細胞周期関連遺伝子SKP2はCKS1やCKS2複合体を形成し、癌抑制蛋白であるp27のユビキチン化(蛋白分解)を促進し、その機能阻害することが考えられた。今後はこれらの同定された遺伝子のメチル化が患者予後の指標となるか検討していく予定である。
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