研究概要 |
(目的)近年、膀胱癌の進展にさまざまな遺伝子のメチル化が関与していることが報告され、われわれはこれまで癌抑制遺伝子のp16INK4aおよびp14ARFのメチル化が膀胱癌患者の予後や浸潤に関与していることを明らかにしてきた。今回、collagen type 1 alpha 2(COLIA2)のプロモーター領域のメチル化が膀胱癌の悪性化にどのように関与しているかを検討し、これから遺伝子のメチル化をスコア化し、患者予後の予測に役立てられるかを検討した。 (方法)脱メチル化剤(5-aza-C)添加前後の膀胱癌株BOYからmRNAを抽出しDNAマイクロアレイを行った。COL1A2はメチル化により最も発現が低下している遺伝子であり、BOYと臨床検体(膀胱癌86例、正常組織11例)においてCOLIA2のメチル化と遺伝子発現を定量化した。また、同遺伝子の発現がほとんどみられない膀胱癌株BOYに遺伝子移入し、細胞遊走能と細胞増殖能を検討した。 (結果)5-aza-C処理後のBOYではCOL1A2の発現が増大し、メチル化スコアは最小化していた。臨床検体では、膀胱癌のCOL1A2の発現は正常組織に比べ有意に低値であった(7.9±1.8vs15.8±3.8,p=0.0015)。また、膀胱癌のCOL1A2のメチル化スコアは、正常組織のそれに比較し有意に高値であった(0.007±0.006vs23.15±16.56,p=0.0066)。さらにCOL1A2のトランスフェクタントでは、細胞遊走能と増殖能がコントロールに比べ有意に低下していた。 (結論)膀胱癌においては、COL1A2の発現はプロモーター領域のメチル化により抑制され、癌細胞の遊走能や増殖能が亢進している可能性が示唆された。すなわち、COL1A2は癌抑制遺伝子として機能していることが示唆された。これまでに得られた知見から、COL1A2や癌抑制遺伝子のp16INK4aおよびpl4ARFのメチル化を組み合わせてスコア化することで、膀胱癌をはじめとする尿路上皮癌の予後予測の指標になると考えられた。
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