本研究は、12週齢オスSDラットにシャム手術(Sham群)、部分的尿道閉塞手術(BOO群)を行い14週齢でBOOラットの半分を無作為に選び、ミニ浸透圧ポンプで4週間カンデサルタン0.2mg/kg/dayを投与し(カンデサルタン群)、計画に沿って18週齢で以下の実験を行った。1)膀胱血流測定、2)膀胱重量測定、3)膀胱壁のエラスチカマッソン染色による組織学的検討、4)膀胱切片のオルガンバス内での収縮実験。 結果:1)レーザードップラー計による膀胱血流測定では膀胱内尿貯留量によって結果が変わるので空の状態で比較した。また大動脈の血流をコントロールとして測定した。Sham群に比べ他の二群はいずれも膀胱血流が増加していたが有意な差ではなかった。2)膀胱重量はSham群211±53mgでBOO群546±370mgと有意に増加し、カンデサルタンは305±97mgと膀胱重量の増加を有意に抑制した。3)エラスチカマッソン染色による膀胱壁の膠原線維の面積はSham群に比べBOO群で増加し、カンデサルタンはBOOによる増加を抑制していた。4)膀胱切片の収縮実験では、Sham群に比べBOO群で神経電気刺激、ATP、カルバコール、KC1のすべての刺激による収縮反応は低下していた。カンデサルタン群はATIIによる収縮反応は消失しており、薬の投与効果が確認できた。カンデサルタンはBOOによる収縮反応の低下を改善させた。以上の結果からラットBOOモデルでは、閉塞による膀胱重量の増加(筋線維、膠原線維の増加)をカンデサルタンが抑制した(膠原線維成分)。同時に閉塞膀胱の膀胱収縮力の低下をカンデサルタンが改善させた。これらの効果のメカニズムは明らかでないが、膀胱血流の違いは確認できなかったので、閉塞膀胱におけるアンジオテンシンIIの局所産生が、細胞増殖や繊維化、酸化ストレスの増大を引き起こしていることによると推測された。
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