研究概要 |
腎癌のうちもっとも頻度の高い淡明細胞型を対象に、転移と強く関連する遺伝子候補をマイクロアレイ・データより粗抽出し、これらの遺伝子について、臨床経過の明らかな多数例の腎癌検体で定量的real-time PCR法により遺伝子発現量を測定し、臨床病理因子、病態や予後、VHL遺伝子変異の有無との関係について解析を行った。まずVCAMl, ADFP遺伝子について400例以上の淡明細胞腎癌で発現量/臨床病態の関係について検討を行い、VCAMlは根治術後の再発予後判定にまたADFPは癌死予後の判定・予測に非常に有用であることを明らかにした。引き続き、疎抽出した遺伝子のうちのランキングの上位に位置する12遺伝子を、同様に定量的real-time PCR法で発現解析を行い、このなかで特に関連が強い上位3遺伝子(VCAMl, EDNRB, RGS5)を明らかにし得た。引き続き193例の腎癌(training set群)におけるこの3遺伝子のCox model共変量値を用いて癌死予後を定量的に推定するモデルを作成した。このモデルを検証する目的で、全く別の未解析の193例の淡明細胞腎癌(test set患者群)に当てはめたところ、癌死予後(全症例群および進行転移例群)と有意に相関していることが単変量、多変量解析で確認できた。さらにtest set群で、既存の病理因子(stage, grade)にさらに3遺伝子判定モデルを追加することで、5年以内の癌死判定の感度、特異度を高めることがlogistic regression/ROC解析でも確認した。今回作成した3遺伝子による癌死予後判定モデルの臨床での有用性の可能性が見いだされた。
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