研究概要 |
生殖細胞特異的に発現するMvh遺伝子座にGFP,lacZ遺伝子をknock-inしたES細胞株では生殖細胞分化を可視化でき、この系では培養液中グルコース濃度によって分化能が異なる。我々はグルコース濃度によって発現変化する遺伝子を前年度までに同定しており、このうち3遺伝子(Txnip,Pttg,RuvB12)について更なる検討を行った。 発現差の確認のため、3遺伝子についてNorthern Blotting、定量RT-PCR法を行った。Txnipは8585±2735倍、Pttgは5.93±0.19倍、RuvB12は2.16±0.12倍の発現差を示していた。3遺伝子とも精巣特異的ではないが、in situ hybridization法によりマウス性腺における局在を検討したところ、いずれも性分化の起こる胎生12.5日目から発現が見られ、新生仔〜成獣に至るまで精巣での発現を確認できた。精子形成細胞を欠損したW/Wvマウス精巣での検討から、TxnipはSertoli細胞で発現することが確認でき、Pttg、RuvB12遺伝子は精細管stage特異的に、精母細胞および精子細胞に発現していることを明らかとした。RuvB12についてはペプチド抗体を作成し、精巣におけるタンパク発現も検討した。さらにRuvB12-GFP融合タンパクを作成し、RuvB12遺伝子の細胞内挙動を検討した。その結果、細胞質に局在する細胞と核質に局在する細胞の2種類が観察され、従来報告されていた核内での働きの他に細胞質での機能を示唆する結果となった。 本研究により、培養下での生殖細胞分化と糖代謝との間に何らかの関連があることが明らかとなった。さらに精巣には糖代謝に関わる酵素のうち特異的isoformが数多く存在することが報告されており、今回同定した遺伝子が成獣精巣でも発現していたことから、精子形成過程にも糖代謝が重要な役割をもつことが明らかとなった。
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