研究課題
基盤研究(C)
【目的】正電荷リボソーム包埋型磁性ナノ粒子(MCLs)を用いた温熱療法を前立腺癌骨転移巣の治療に応用するための基礎研究を行った。前立腺癌骨転移巣では癌細胞のみが増殖するのではなく、破骨細胞、骨芽細胞と前立腺癌細胞が密接に関連しあって転移巣を形成する。従って骨転移巣の癌細胞の増殖抑制のみでも、破骨細胞の活動抑制のみでも骨転移巣の治療とは言い難い。本研究では(1)骨転移巣の癌細胞、(2)破骨細胞、骨芽細胞ともに増殖を抑制することを目標とした。【方法】ラット前立腺癌PLS-10の腫瘍塊を、F344ラットオス5週齢の頭頂部皮下に移植した。PLS-10移植後20日目にMCLsを注入。注入直後、24時間後、48時間後に15分間磁場照射をおこない、3日間連続磁場照射を行った。MCLの注入と3日連続の磁揚照射を1クールとして、7日おきに計3クール実施した。【結果】(1)骨破壊:骨破壊の程度を、「骨欠損の長さ」/「全頭頂骨長さ」×100(%)で算出した。治療開始時、治療終了時のコントロール群、治療終了時の治療群の骨破壊の程度はそれぞれ、20.1%,62.5%,32.6%であった。治療群において骨破壊は有意に抑制された。(2)破骨細胞数:破骨細胞数をTR畑染色評価した。治療開始時、治療終了時日のコントロール群、治療終了時の治療群の破骨細胞数は198,525,321と治療群で有意に抑制されていた。(3)細胞増殖:細胞増殖をPCNA染色冠状断の摘出標本において、「PCNA染色陽性の前立腺癌細胞数」/「すべての前立腺癌細胞」×100(%)で算出した。腫瘍と頭頂骨の境界領域(Tumor-Bone Interface:TB-I)、腫瘍のみの部分(Tumor Alone Area:TA-A)に分けて計測した。治療開始時のTB-1およびTA-Aの細胞増殖率は61.2%,31.5%であった。治療終了時におけるTB-IおよびTA-Aの細胞増殖率は39.2%,20.4%であった。無治療の状態においてTB-IではTA-Aより細胞増殖は増加していた。治療によって、このTB-Iでの細胞増殖も抑制できた。本温熱治療は前立腺癌骨転移巣の治療に応用できる可能性があることが示唆された。
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Prostate (掲載確定)
Prostate. 2008 (in press)