【目的】われわれが前立腺癌のプロテオミクスで発見した新規組織マーカーTT902はSND1と同定された。このSND1は、そもそもEB virusの転写活性増強因子として同定された。最近、細胞増殖因子であるc-Mybとの結合能が示され翻訳活性化への関与も示唆されている。さらに、癌抑制因子であるAPCを阻害することで大腸癌発癌にも関与しているとの報告もある。しかし未だ不明な点も多く、特に前立腺癌との関連に関する報告はない。本研究では、前立腺癌におけるSND1の発現を解析するとともにその機能について検討を加えた。【方法】SND1の抗体を作成し、前立腺全摘標本の免疫組織染色により発現を解析した。既存の前立腺癌組織マーカーであるAMACRと比較して臨床的な有用性を検討した。mRNAの発現はin situ hybridizationで確認した。前立腺癌細胞PC3のSND1 mRNAをノックダウンしてその増殖に与える影響を検討した。【結果】SND1とAMACRの前立腺癌に対する感度と特異度はほぼ同等であった。しかし、AMACRと異なりSND1はGleason gradeが高い細胞ほど高発現を示していた。mRNAも癌細胞に高発現していることを確認し、そのノックダウンによりPC3の増殖は有意に抑制された。【結論】SND1は前立腺癌細胞で高発現し、特にGleason gradeと関連していた。その機能は、癌細胞の増殖に関係していることが示唆された。
|