今回の基盤研究により、生殖腺発達段階の前精祖細胞の特異的マーカーであり、雄性生殖細胞の細胞表面に特異的に発現している新規GPIアンカー型蛋白質であるTEX101に関して、精子成熟の分子機構における役割を解明するために、TEX101の分子解剖学的特徴付けを進めた。さらに、TEX101を標的とするshort hairpin RNA(shTEX101)を開発し、in vitro系およびin vivo系において、TEX101発現のノックダウン解析を行った。 マウス生殖細胞よりTEX101のcDNAをクローニングし、COS-7細胞にトランスフェクションした細胞を作製した。その細胞を用いて、独自に作製した3つのGFP融合shRNA(shTEX101)ベクターの抑制効果の検証を行い、どのベクターも十分な抑制効果を持つことが明らかとなった。このベクターを用いて、マウス精巣にin vivo electroporationを試みた。成獣精巣への導入効率は低かった。それに対し、新生児期の精子形成開始前の精巣にshTEX101ベクターを導入した精巣は、対照としてLacZに対するshRNAベクターを導入した対側の精巣に比べ、精巣は小さく、精子形成障害を示唆する所見を得た。現在、生殖細胞への導入効率をさらに高めるために、大阪大学・宮崎純一教授より分与を受けたpCAGGSベクターの導入を行っている。 今回の基盤研究により、GPI-アンカー型蛋白質であるTEX101に対する特異的shRNAの開発に成功した。それを用いた解析により、生殖腺の発達、精子形成過程におけるTEX101の役割の一端を解明することができた。さらにshTEX101を導入した生殖細胞の詳細な形態学的及び生化学的解析が課題として残された。成果は投稿準備中である。
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