TGF-βスーパーファミリーに属するアクチビンはサブユニットの組合せにより複数の分子種を構成し、アクチビンとβサブユニットを共有するインヒビンやアクチビン結合蛋白質であるフォリスタチンにより活性が調節されている。一方、アクチビンが炎症や組織の傷害/修復過程に関与していることが、近年、種々の組織や細胞で報告されている。このため、絨毛膜羊膜炎モデルにおけるインヒビン・アクチビンスーパーファミリー蛋白質の産生を検討した。 臨床試験審査委員会の承認の下、全身合併症、感染症、胎児異常等の無い妊婦よりインフォームド・コンセントを得て、満期の予定帝王切開において卵膜を採取し本研究に用いた。羊膜上皮初代培養細胞では、DNAマイクロアレイとquantitative PCRによりインターフェロン誘導性遺伝子とコラーゲンの産生や代謝に関与する遺伝子の発現がダイオキシンにより誘導されることを明らかにした。マイクロアレイデータのpathway analysisではインヒビン/アクチビンβAサブユニット遺伝子の発現も増加しており、アクチビンAは羊膜においても組織の傷害に関与している可能性が推測された。羊膜間葉系培養細胞では、TNF-αにより、インヒビン/アクチビンβAサブユニットmRNA発現量が増加し、インヒビン/アクチビンβBサブユニットmRNA発現量は増加しないという結果をquantitative PCRにより得た。ELISAでは、TNF-αによりアクチビンA産生が増加していた。このため、炎症性サイトカインTNF-αは羊膜間葉系細胞において、mRNAと蛋白質の両レベルでアクチビンAの産生を促進していると考えた。以上より、羊膜上皮細胞、間葉系細胞の両細胞においてアクチビンA産生が増加していることが推測された。
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