研究概要 |
双胎間輸血症候群(TTTS)の発症機序と病態の解明を行うため,一絨毛膜二羊膜性(MD)双胎を対象として,超音波Doppler法を用いた血行動態の評価を行う事を第一目的とした.妊娠16週〜26週のMD双胎に対し,一週間毎に臍帯動脈,胎児中大脳動脈,胎児静脈管,胎児下大静脈及び,胎児静脈管の血流波形を測定し,得られた情報から同妊娠期間における正常値を算出した.また,そのデータを用いて,TTTS発症患者における血行動態の変化を検討した.その結果,TTTS発症妊婦では,受血児の胎児中大脳動脈のPulsatility Index(PI)が低下している事が明らかとなった.また,胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を行うと,低下していたPIは上昇するとともに,中大脳動脈収縮期最高血流速度が上昇する事が明らかとなった.レーザー凝固の前後で,受血児の胎児血中酸素分圧の上昇によって同現象が引き起こされている事が推察されている.また,供血児においては,臍帯動脈拡張期末期血流途絶を有する症例が約30%を占めていたが,胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術によって8割の症例が改善する事が明らかとなった.TTTSにおいて,供血児は臍帯動脈を通じた胎児心臓からの血液の拍出が障害され,同治療で改善する事が明らかとなった.平成18年度は上記の結果が明らかとなったが,継続中の研究として,TTTSの胎盤吻合血管の形態的特徴の解析を行っている.
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