双胎間輸血症候群(TTTS)の発症機序と病態の解明を行うため、一絨毛膜二羊膜性(MD)双胎を対象として、超音波Doppler法を用いた血行動態の評価を行う事を第一目的とした。妊娠16週〜26週のMD双胎に対し一週間毎に臍帯動脈、胎児中大脳動脈、胎児静脈管、胎児下大静脈、及び、胎児静脈管の血流波形を測定し、得られた情報から同妊娠期間における正常値を算出した平成18年度のデータを基礎として、TTTS発症患者における血行動態の変化を検討した。その結果、TTTS発症妊婦では、受血児の胎児中大脳動脈のPulsatility Index(PI)が低下している事が明らかとなった。また、供血児の臍帯動脈血流波形において、拡張期末期の血流途絶や逆流を認める症例において、レーザー治療による吻合血管の遮断により、血流波形が改善する症例が一部に存在することが明らかとなった。そのような症例では、動脈-動脈吻合血管が有意に高率で存在することから、供血児の血流異常に対して、動脈-動脈吻合が原因となっていることが示唆された。 また、TTTSの前段階に位置づけられると思われるselective IUGRの症例においては、この臍帯動脈血流波形の異常が、その後のTTTSの発症に大きく関与することが明らかとなった。
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