研究概要 |
1.正常妊婦およびPIH患者における末梢血EPCの増殖・分化能に関する検討 1)それぞれ,末梢血を採取し,末梢血中に存在するCD133+/CD34+/KDR+の細胞をflow cytometryにて測定し,circulating EPCとして解析を行ったところ,分泌期から妊娠初期におけて高値を示し,妊娠経過とともに減少した。PIH患者の末梢血中のcirculating EPC数は妊娠末期の妊婦と比して特に変化を認めなかった。しかしながら,単核球のみを抽出して1週間培養したところPIH患者由来のEPCは著明な高値を示した。 2)BrdU assayを用いたEPCの増殖能に関する検討では,angiotensin IIの投与による著明な増殖能の亢進を認めた。PIH患者では様々な細胞・組織においてangiotenein IIに対する感受性が亢進しており,EPCにおいても同様に感受性が亢進しているものと考えられた。 3)EPCを培養臍帯静脈由来血管内皮細胞とともに培養したところ,EPCは血管内皮細胞が形成したtube formationの中に取り込まれた。この結果は,今回我々が検討したEPCが血管新生に対して真に関与している証左である。 以上の結果より,PIHの病態(おそらくは胎盤内で生じている血管新生の異常など:angiotensin IIに対する感受性増加など)が骨髄におけるEPCの増殖能を刺激しているが,何らかの血清因子(sFlt-1など)が骨髄から末梢血への動員を阻害しているものと推測させた。 2.GFPキメラマウスを用いた胎盤内血管形成における骨髄由来幹細胞の役割 骨髄をGFP陽性細胞で置換したキメラマウスを妊娠させると,妊娠初期には脱落膜内の受精卵周囲にGFP陽性細胞が集積している様子が認められ,妊娠3週には胎盤内で管腔形成をするGFP陽性細胞を認めた。管腔を形成した細胞はCD34陽性であり骨髄由来の細胞が血管内皮細胞に分化したものと考えられた。 計画 3.題微鏡用培養装置を用いたEPCの遊走能に関する検討 EPCを顕微鏡上で培養しながら試薬を添加し,EPCの遊走能をreal timeに測定する。この方法によりPIHで認められたEPCの末梢血への動員障害の原因が解明されるかもしれない。
|