研究概要 |
1.GFPキメラマウスを用いた胎盤内血管形成における骨髄由来幹細胞の役割 骨髄をGFP陽性細胞で置換したキメラマウスを妊娠させると妊娠2〜3週にかけて腎臓においてGFP陽性細胞が発現し、その多くはメサンジウム領域に認められた。成体において骨髄幹細胞は腎のメサンジウム領域に取り込まれることが知られており同様の反応が胎児由来細胞についても起こったと思われる。さらに分娩後GFPが発現する細胞はメサンジウム領域以外にも尿細管上皮などにも見られるようになることから、胎児由来の細胞は母体の腎臓において組織幹細胞として作用している可能性がある。その機能についてはよくわかっていないが、免疫染色法によって広範囲にAT1が発現している腎臓において、GFP陽性細胞はAT2を強く発現していた。母体血中に経胎盤的に流入した胎児由来の細胞の一部は、直接母体臓器の細胞に分化し、AT1・AT2のcrosstalkを介して妊娠の生理もしくはなんらかの病態形成に関与している可能性が考えられる。 2.顕微鏡用培養装置を用いたEPCの遊走能に関する検討 ラット由来のEPC細胞株(BME)を顕微鏡上で長時間培養しながらEPCの遊走能をreal timeに測定した。EPCの増殖を促進することが知られているPIGFはEPCの走化性に関与しなかった。一方、同様にEPCの増殖に関与するVEGFはEPCの走化性を促進した。このVEGFの作用は妊娠高血圧症候群で血清中に増加するsFlt-1によって阻害されたため,妊娠高血圧症候群において血中のEPCが増加しない理由はのsFlt-1の増加によるVEGFによるEPCの走化性に対する障害が原因ではないかと考えられた。
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