研究課題/領域番号 |
18591811
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
竹田 省 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20143456)
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研究分担者 |
高井 泰 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60323549)
石原 理 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70176212)
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キーワード | 性同一性障害 / 卵巣 / 凍結保存法 / アポトーシス |
研究概要 |
性同一性障害FTM (Female to Male Transsexuals)症例に対する性別適合手術時に、本人の同意のもとに卵巣の提供を受けた。いずれも20-30代の身体的性別が女性の患者である。各例において、LH、FSH、エストラジオール、テストステロンなどの内分泌学的背景を検討した。 摘出された左右卵巣はいずれも半切し、病理学的検討に提出した残りを研究に用いた。 今回の研究では2種類の凍結法(いずれもvitrification法)を検討した。第一に、体外受精時に受精卵凍結に広く用いられるだけでなく、最近は未受精卵子などの凍結にも応用されている通常のvitrification法(Cryotop法)である。まず、卵巣組織を生理的食塩水中で3-5mm角切片とし、さらに実体顕微鏡下で、0.5mm角の切片とした。北里サプライのvitrificationキット(VT101)を用い、室温にもどしたEquilibration Solutionに20分、Vitrification Solutionに3分浸漬したのち、Cryotopにのせそのまま液体窒素中にて凍結した。第二に、イヌやブタ卵巣凍結に用いられているDAP213保存液を用いる凍結法(DAP法)である。三菱化学ヤトロンのキットを用い、卵巣組織をPB1培地内で3-5mm角切片とし、さらに実体顕微鏡下で、1mm角の切片とした。あらかじめクライオチューブに分注しておいた5μlの1M DMSOに切片を2個いれ5分後、氷中で冷却したDAP-213保存液を95μl添加して5分incubationし、液体窒素中で凍結した。 Cryotop法で凍結された4サンプルとDAP法で凍結された5サンプルを融解し、HE染色にて形態を観察したところ、後者の1サンプルで原始卵胞が確認された。 Cryotop法で凍結された4サンプルとDAP法で凍結された5サンプルを融解し、NOD-SCIDマウス(卵巣を8割ほど摘出)の卵巣嚢内に移植した。4週間後、卵巣を取り出し、HE染色に供した。前者での生着率は12.5%、後者での生着率は70.0%で、後者の1サンプルで原始卵胞を認めた。 性同一性障害患者から得られた卵巣切片を凍結融解し、NOD-SCIDマウスへ生着させ、原始卵胞を確認することに成功した。Cryotop法よりもDAP法がヒト卵巣の凍結保存法として優れている可能性が示唆された細切法および採材部位や大きさの検討が必要と思われた。
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