我々は、昨年月、DAP法とCryotgp法という2種類のガラス化法によるヒト卵巣組織の凍結保存を検討し、DAP法により凍結保存した組織片を融解後に免疫不全マウス(NOD-SCIDマウス)に移植したところ、卵胞発育を認めたことを報告したが、最近、Cryotop法を改良したCryotissue法によりウシおよびヒト卵巣組織のガラス化凍結保存に成功したとの報告がなされた。そこで、ヒト卵巣組織を35人の性同一性障害患者から書面による同意を得て採取した。ヒトでの再移植手術を想定し、卵巣組織片を大きくし、最終的には10mm四方・厚さ1mmとした。DAP法では、DMSOを含むPBI培地に4℃で5分間卵巣組織を浸漬した後、冷却したDAP213液(DMSO、アセトアミド、プロピレングリコール含有)により4℃で5分間処理し、液体窒素に投入した。Crotissue法では、平衡液(エチレングリコール(EG)、ジメチルスルホキシド(DMSO)含有)に室温で25分間卵巣組織を浸漬した後、凍結液(EG、DMSO、ショ糖含有)に15分間浸漬してから液体窒素に投入した。凍結後融解した卵巣組織を、SCIDマウスの皮下に移植した。DAP法で凍結後、融解した卵巣組織では、全卵子の1/3〜1/6くらいの頻度で色調・形態が不良な卵子を認め、SCIDマウスに移植した組織片では卵胞を認めることができなかった。一方、Cryotissue法で凍結後、融解した卵巣組織では、色調・形態が不良な卵子の明らかな増加は認めなかった。SCIDマウスに移植した組織片の生着を認めた。ヒト組織片を大きくした場合、Cryotissue法では良好な成績だったが、今後さらに検討を加える必要があると考えられる。
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