研究概要 |
研究代表者らは、不妊医療をより科学的な裏付けに基づき安全かつ効率的に遂行することを最終目的として、これまで受精・着床の分子機構の解析を行ってきた。それらの研究過程で、発生段階的発現動態が性差により異なる新規生殖細胞特異的タンパク質TEX101を発見し、多角的に解析を進めている。 TEX101分子は雌雄生殖細胞の細胞膜に極めて多く発現するが、その一次構造は既知タンパク質と全く相同性を示さないことから、本分子特有のユニークな生理活性を有していることが強く推察される。しかし、既知分子との低相同性は本分子の一次構造を基にした機能予測が困難であることを示唆している。通常、タンパク質が生体内でその機能的役割を果たすためには、その分子単独で機能を発現するのではなく、その細胞に発現する「プロテオームの密接な相互作用ネットワーク」が必要である。近年、核酸・タンパク質データベースの整備と質量分析計の飛躍的な技術向上により、高感度かつ高精度のタンパク質同定が可能となっておりTEX101分子の機能を明らかにするためには、本分子と相互作用するタンパク質を同定することが極めて有効なアプローチの一つとして考えられる。 本研究ではこれらをふまえ、TEX101特異抗体を用いた免疫沈降法とLC-mass spectrometryを用いてTEX101の共役分子の同定を試み、これまで以下のことを明らかにした。 1)TEX101の精巣内共役分子候補としてcellubrevin,annexin A2,ly61を同定した。 2)Cellubrevin(VAMP3)が精巣内においてTEX101を細胞膜へ輸送する特異的分子としての可能性を超高分解能蛍光顕微鏡法を用いて示した。 TEX101とannexinA2,ly6kとの相互作用を現在解析中である。
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