研究概要 |
生殖腺における配偶子の形成過程には著しい性差が存在する。我々は、性特異的な配偶子形成分子機構の解析の一環として、発生段階的発現動態が性差により異なる新規生殖細胞特異的タンパク質TEX101を同定し、多角的にこれまで解析を進めてきた。本分子は、ヒトを含めた哺乳動物に広く存在し、マウスを用いた研究では、胎生期の前精原細胞と卵原細胞に発現が共通して認められるが、卵原細胞では出生後その発現は消失する。一方、精原細胞では思春期の減数分裂開始直後にその発現は一時消失するが、精母細胞以降の精細胞に再び強い発現が認められるようになる。更に、成熟精巣ではTEX101遺伝子が異なる3種類のプロモーターにより発現制御され、転写レベルでの雌雄性差が存在することをこれまで明らかにした。このような発現動態を示す本分子は、雌雄生殖細胞のマーカー分子として注目され、その一次構造が既知タンパク質と全く相同性を示さないことから、配偶子形成過程において本分子特有のユニークな生理活性を有することが強く推測された。本研究ではTEX101分子の発現性差に着目し、本分子の機能解析を通じて配偶子形成過程の分子機構について、プロテオミクス的手法を用いたTEX101の共役分子の同定を試み、以下の研究結果を得た 1)TEX101の精巣内共役分子候補としてcellubrevin,annexin A2,ly6kを同定した。 2)Cellubrevinが精巣内においてTEX101を細胞膜へ輸送する特異的分子としての可能性を示した。 TEX1O1は精巣内では少なくとも一部はGPI-アンカー型タンパク質として発現しており、またその立体構造からウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター受容体スーパーファミリーに属すことが明らかになり、同じタイプの分子ly6kとの共役が精巣内での配偶子形成過程に機能的関与している可能性を示した。
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