研究概要 |
はじめに)前立腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌などのホルモン依存性腫瘍の頻度は、西欧に比ベアジア諸国では近年まで少なかった。しかし日本においては食生活、ライフスタイルの欧米化にともない増加傾向にある事が指摘されている。ホルモン依存性腫瘍の頻度が低かった理由として大豆など植物性エストロゲンを以前は多く摂取していた為と推測されている。近年、植物性エストロゲン(isoflavone)による様々な効果が話題となっている。動物実験において、植物性エストロゲンによる前立腺、乳腺、皮膚、精嚢、子宮内膜の発癌に対する抑制効果が報告されている。一方、子宮に対しては子宮内膜増殖症発症や子宮癌のリスクが高まるといった報告があり、未だ一定の見解を得られていないのが現状である。そこで今回我々はIsoflavone、特にdaidzeinに注目し、子宮内膜癌細胞における効果と作用を検討した。 方法)1.daidzein richのアグリコン型イソフラボンであるDr.AglyMax^<TM>を用い、子宮内膜癌細胞株(ISHIKAWA細胞)における増殖効果の検討を行った。無添加群とDr.AglyMax^<TM>を100μM添加した群において、24時間後の増殖能の評価をBrdUを用いたELISA法にて比較検討した。2.実験1と同様に培養された細胞よりAGPC法にてRNAを抽出し、microarrayを用いた約47,000の遺伝子発現の差違を検討した。 結果)1.Dr.AglyMax^<TM>を添加した群は無添加群(100%)と比較して濃度依存性に有意な増殖能の低下が認められた(67%)(p<0.01)。2.検討した約47,000の遺伝子の内、1165の有意に上昇する遺伝子の発現が認められ、1114個の有意に低下する遺伝子が認められた。 考察)Isoflavone特にdaidzein richのIsoflavoneに子宮内膜癌の抑制効果があることが示唆された。また、Microarrayの結果よりステロイド代謝酵素や、細胞内サイクルに関与する遺伝子が動いていることから、これらの遺伝子を介するIsoflavoneの癌抑制効果への関与が示唆された。
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