着床の成立にとって胚浸潤は不可欠な要素であり、複雑な分子間ネットワークが正常に機能することが知られてきた。本研究では、着床を可能にする胚側の因子の同定を目指し、胚におけるメタロプロテアーゼの発現解析を行うとともに、腫瘍細胞の浸潤との相違について明らかにする。 一方、胚は着床に向けて細胞内クリアランスであるオートファジーを活発化させることが明らかとなってきた(投稿準備中)。卵子は受精前後において細胞内のすべての活動をほぼ停止した状態となると考えられており、細胞内に蓄積した余分な成分を取り除く作業をしているものと考えられるが、一方で着床の準備を進めていることも考えられる。オートファジーは初期胚の発生段階が進むにつれてより活発化していることが明らかとなった。また、老化による胚の機能低下はオートファジーの不全と深くかかわっている可能性が得られてきた。オートファジーは細胞内不要物の分解系であり様々なプロテアーゼが関与すると考えられていることから、ADAMTSファミリー遺伝子群とこれらの過程との関わりについて検討を進めている。 さらに、細胞浸潤過程におけるADAMTSファミリー遺伝子の発現について、トロフォブラスト細胞と顆粒膜細胞腫の比較を行ったところ、ADAMTSファミリーの遺伝子変化はトロフォブラスト細胞で顕著に変化するのに対して顆粒膜細胞腫ではほとんど変化が認められなかった。現在、過剰発現系を用いて更なる検討を進めている。
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