本研究は、胎児期の移植免疫学あるいは発生・分化の基礎的研究を行い、それを基にした胎児期の移植治療の開発を再生医療への応用を目的としている。 1)胎児移植治療モデルの作成 マウスを用いた胎児幹細胞移植治療モデルにより、キメラマウスを作成した。このモデルは既に諸研究報告により確立されたものである。 2)免疫トレランスのメカニズムヘの解明 マウス胎児への細胞移植後、免疫組織化学を用いた組織染色を行い、移植細胞の胎児への生着率を検討した。生着状況は移植細胞数に依存するが16〜20%であり、移植細胞中のCD8陽性細胞が生着率を左右する細胞であることを確認した。さらに、CD4CD25陽性細胞がGVHDを抑制する機能を持つことを確認し、これにより移植治療後の副作用軽減につながる実験系開発の可能性が示唆された。 3)治療効果が十分得られるレベルのキメリズムの獲得が可能な治療法の開発 ドナーリンパ球輸注によって生着率がほぼ100%になることを示した。それ以外にドナー細胞が生着したキメラマウスを用いて、その疾患マウスに出現する症状の改善の有無と程度については、次年度検討を行う予定である。 4)ヒト間葉系幹細胞の規格化 得られたヒト幹細胞に対して、網羅的発現遺伝子解析(Affimetrix社Gene Chipによる解析)ならびにモノクロナール抗体を用いた既知の分子発現解析を行った。 5)異種動物成分を排除したヒト間葉系幹細胞培養法・維持法の標準化 臍帯血・子宮内膜・月経血・胎盤・脂肪などのヒト組織を間葉系幹細胞の供給源とした。
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