研究課題
基盤研究(C)
平成18年度は、子宮頸部粘膜における細胞性免疫応答を検討するための子宮頸部リンパ球の分離・培養法を確立した。子宮頸部擦過細胞をサイトブラシで採取し、上皮細胞とリンパ球に分離できる。上皮細胞では、子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)の同定を行い、リンパ球でそのHPVに対する細胞性免疫応答能を検討する予定である。子宮頸部の前癌病変の消長と宿主免疫応答の関連性を粘膜の細胞性免疫の面から調べた例がなく、重要な知見が得られる可能性がある。また、子宮頸部の上皮細胞には、HPVが感染し子宮頸癌の前癌病変を形成するが、その感染細胞に対する初期免疫から獲得免疫を誘導するための架け橋となる膜蛋白質CD1dに注目した。子宮頸部におけるCD1dの局在とHPV関連病変におけるその変動を免疫染色法で調べた。正常子宮頸部では、重層扁平上皮の基底〜傍基底層にCD1dが発現しているが、HPV病変では、その進行とともにCD1d発現が減弱し、子宮頸癌や尖圭コンジローマでは完全に消失している。前癌病変の自然消退例については、自然消退時にCD1dの発現が増強されていることを見いだし、これが子宮頸部の炎症反応を反映していると考えられた。CD1dの発現が増強した病変では自然消退しやすいことが示唆された。CD1d発現を見ることは子宮頸部上皮異形成(前癌病変)の消長を知るバイオマーカーになりうると考えられた。平成19年度には、子宮頸癌でもっとも多く検出されるHPV16型のE5蛋白質を強制発現させた腟上皮細胞株では、CD1dの発現が抑制されていることを確認した。その抑制メカニズムについて検討中である。また、CD1dによって特異的に活性化されるinvariant NKT(iNKT)細胞の子宮頸部粘膜への浸潤能を免疫組織化学的に検討した。子宮頸癌の前癌病変の消退と粘膜に存在するiNKT細胞数は強く相関し、かつiNKT細胞浸潤の多い上皮にはCD1dの発現が確認されていた。HPVによるCDld抑制はiNKT細胞の動員を阻止するための免疫エスケープ機構ではないかと考えられた。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)
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