研究課題/領域番号 |
18591829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊東 和子 信州大学, 医学部, 助手 (40303458)
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研究分担者 |
塩沢 丹里 信州大学, 医学部, 助教授 (20235493)
小西 郁生 信州大学, 医学部, 教授 (90192062)
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キーワード | 子宮頸部悪性腺腫 / LEGH / 子宮頸管腺 / 胃型粘液 / 治療前診断 |
研究概要 |
子宮頸部悪性腺腫(minimal deviation adenocarcinoma : MDA)や良性類縁疾患の症例を集積し治療前の諸検査結果と手術摘出標本の病理所見、およびその後の経過を総合的に検討した。 術前に臨床所見およびMRI画像所見からMDAあるいは良性類縁疾患と診断され、手術を施行された計28症例を検討した。まず、手術摘出標本の病理組織学的診断は良性疾患が23例、悪性腫瘍が5例であった。良性疾患の内訳は形態学的にMDAに類似する頸管腺の増殖性疾患であるlobular endocervical glandular hyperplasia(LEGH)が19例、頸管腺のHyperplasia (nonspecific)が1例、ナボット嚢胞が2例、Endocervical adenomyomaが1例であった。悪性腫瘍の内訳はMDA1例、MDA+粘液性腺腫1例、粘液性腺癌2例、粘液性腺癌+LEGH1例であった。次にMRI画像所見より病理組織診断を推定しこの診断と最終病理組織診断を比較検討した結果、最終的な癌は5例ともMRIにて明らかに癌と診断できた。良性疾患の23例のうち19例は明らかに良性と診断され、1例はMRI上悪性腫瘍が疑われoverdiagnosisとなり、3例は画像の質や撮影条件が十分でなかったため、MRIからの診断が得られなかった。以上の検討からMRIによる悪性腫瘍に関する術前診断正診率は感度100%特異度91.0%であった。 病理組織とMRIで共通した所見をまとめると、悪性腫瘍5例中5例とも腫瘍が子宮頸部間質の深部に及んでおり、腫瘍の辺縁は不整であった。また、5例とも病巣に小さな嚢胞や腺腔を形成しているものの、大きな嚢胞の形成は認めなかった。一方、良性疾患の特徴としては、LEGH19例中9例で子宮頸管内側に病変を認め、病巣辺縁の境界は明瞭であった。10例で子宮頸部に充実性成分が認められたが、これより深部の間質に大きな嚢胞像を認めた。ナボット嚢胞の2例は充実性成分がなく、嚢胞像のみであった。 以上の検討から、病理組織診断にて真のMDAと診断し得る症例は稀であり、これまでMDAと診断されていた症例の中でもLEGHの頻度が高いことが判明した。またMRI画像でLEGHは特徴的な所見を呈する可能性があることが示唆された。これらの新しい知見をさらに確実なものにするためにさらに症例を集積している。
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