研究概要 |
我々は正常子宮内膜および子宮内膜癌の増殖におけるIGF-1/MAPK経路の関与を明らかにする目的で、MAPK経路の中心的因子であるERK1/2とその活性型である燐酸化(p)ERK1/2の発現を免疫組織学的に検討した。その結果シグナル伝達活性のないERK1/2は正常内膜、内膜癌ともに発現していたが、活性型であるpERKは正常内膜増殖期、および子宮内膜癌に発現しており、さらにpERKの発現は、増殖マーカーであるKi-67の発現と相関していたことから、正常および悪性子宮内膜組織の増殖にはMAPK経路が関与していることが示された。 次に我々は子宮内膜癌のエストロゲン(E)依存性の増殖におけるMAPK経路の活性化を検討するために、エストロゲン受容体を有する子宮内膜癌Ishikawa細胞を用いて検討した。Ishikawa細胞にEを添加し、その細胞増殖刺激作用をWST-1アッセイで検討したところ、Eの濃度依存性に細胞増殖の亢進が確認された。次にE添加後の細胞周期調節因子であるサイクリン(D1,E, A, B)の発現を観察したところ、E添加によって特にサイクリンD1とEの蛋白とmRNAの発現の増加が観察され、同時にE添加後のpERK分画の増加を認めたことから、EによってMAPK経路が活性化されていることを確認した。 一般にMAPK経路が活性化されるためには、細胞外からの増殖因子の刺激が必要である。我々はE依存性の増殖因子を同定するために、数種類の増殖因子をスクリーニングしたところ、insulin-like growth factor-1(IGF-1)が最もE依存性が明瞭であったため、IGF-1の関与を検討した。このためIshikawa細胞にIGF-1を添加したところ、濃度依存性の増殖とERKの活性化が認められ、IGF-1の関与が明らかになった。
|