研究概要 |
1 子宮体癌におけるIDO免疫組織染色 Indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)はトリプトファン代謝酵素であり、T細胞やNK細胞を抑制し免疫寛容を誘導するため、癌の宿主免疫機構からのescapeに関与する可能性が報告された。本年度は子宮体癌でIDOが予後規定分子に成り得るかを検討した。子宮体癌手術症例80例を対象とし、インフォームドコンセントを得て検体を採取しIDO免疫組織染色を施行。発現強度とパターンをスコア化して臨床病理学的因子や予後との相関につき解析した。IDOは腫瘍細胞に局在し80例中37例が強陽性であった。IDO強発現はstage、筋層浸潤、脈管侵襲、リンパ節転移に各々有意に相関した。予後解析ではOS、PFSともIDO強発現群はIDO陰性・弱発現群に比較し有意に予後不良であり、stage I-IIのみでもPFSで有意差があった。さらに多変量解析にてIDO強発現はstageとともに再発の独立した予後因子であった。以上よりIDOは子宮体癌の予後を規定する新規分子マーカーに成り得ることが判明した。(Br J Cancer95:1555-1561,2006に掲載) 2 IDO過剰発現子宮体癌細胞株の作成と機能解析 国立長寿研の滝川修博士より供与されたヒトIDO遺伝子ベクターを調整し、子宮体癌細胞株AMECにLipofectamine法によりトランスフェクションし、複数のシングルクローンを採取した。IDOの発現量をウエスタンブロットで解析し、酵素活性を測定し過剰発現株を樹立した。この細胞を用いてin vitro増殖能をMTT法にて調べたところコントロールベクター導入株と有意な差は認めなかった。次いでこれらの細胞株をBalb-cヌードマウスに皮下移植したところ、過剰発現株は有意に腫瘍容量の増大を認め、次年度に向けて引き続きメカニズムを解析中である。
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