研究概要 |
Indoleamine 2, 3-dioxygenase(IDO)はトリプトファン代謝酵素でありT細胞やNK細胞を抑制し免疫寛容を誘導する。今回子宮体癌におけるIDO発現の意義を明らかにするため以下の研究をおこなった。 (1)腫瘍浸潤リンパ球(TIL)とIDOの関係 子宮体癌65例を対象とし、インフォームドコンセントを得てIDO免疫組織染色を施行し、IDO陰性/弱発現群と強発現群に分類し、予後(OS, PFS)との相関を検討した。次に同一切片でCD3(panT)、 CD8(CTL)、 CD57(NK)の免疫染色を行い、TILの個数を腫瘍上皮内と腫瘍間質内に分けてカウントした。その結果IDO発現強度とTILカウントは逆相関した。多変量解析ではStage、IDO発現、間質内CD3 60未満の3項目がPFSの独立した予後因子であった。以上より子宮体癌細胞に発現するIDOが腫瘍内TILやNKを抑制して宿主免疫機構からの逃避を誘導し、腫瘍進展や不良な予後に関与する。 (2)IDO過剰発現細胞株を用いた解析 ヒト子宮体癌細胞株AMECにIDOcDNAをstable transfectionしIDO過剰発現株を確立。in vitroの性格をmock株と比較した。次いで両株をヌードマウスに皮下移植し腫瘍重量、生存率を検討。さらにIDO過剰発現株移植マウスにIDO阻害剤1-MTの単独投与、抗癌剤との併用投与を行った。IDO過剰発現株はin vitro増殖や抗癌剤感受性は対照株と有意差を認めなかった。しかしヌードマウスにおける腫瘍増殖は著明に更新した。移植マウスのNK細胞数は減少し、また過剰発現株のconditioned medium添加によりNK lysis活性は著明に抑制された。移植マウスにおいて1-MTと抗癌剤との併用により抗癌剤単独時に比較して腫瘍重量の減少と有意な生存期間の延長を認めた。
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