研究概要 |
トリプトファン代謝酵素Indoleamine 2, 3-dioxygenase(IDO)はマウスにおいて免疫寛容を誘導する。我々は子宮体癌組織において腫瘍細胞に発現するIDOが予後不良因子となり、腫瘍浸潤性CD8+T細胞やNK細胞数を低下させることを前年度までに報告した。今年度は、子宮体癌IDOの細胞・分子レベルでの機能解析を行い、IDOが腫瘍進展に関与するメカニズムを解明することを目的とした。 ヒト子宮体癌細胞株AMECにIDOcDNAを導入し複数のIDO過剰発現クローンを確立し、in vitro、in vivoにおけるbehaviorをコントロールベクター導入株(mock)と比較した。次に過剰発現株とmock株との間で約35000遺伝子についてDNA microarrayを施行し遺伝子プロファイリングを解析し、さらに有意に発現亢進を認めた遺伝子についてリアルタイムPCRを施行した。 IDO過剰発現株はin vitro増殖能、遊走能、抗癌剤感受性はmock株と有意差を認めなかった。しかしヌードマウス皮下移植時の腫瘍増殖は著明に更新した。過剰発現株の培養上清中には代謝産物のキヌレニンが多量に分泌され、上清添加によりNK lysis活性は著明に抑制され、移植マウスのNK細胞数も減少した。DNA microarrayによりIDO過剰発現株で4倍以上に発現亢進した遺伝子が56個あり、SLAM family/CD150antigenが過剰発現株で33.7倍に上昇しており、PCRでも18.8倍に発現亢進していた。 以上より子宮体癌のIDOは局所のNK細胞を抑制して免疫寛容を誘導することに加えて、腫瘍細胞自身における複数の分子の発現誘導が関与して腫瘍進展に貢献することが示唆された。
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