研究課題
基盤研究(C)
タキサン系製剤のパクリタキセルは異常な微小管束を生成し安定化させることで細胞毒性をあらわす。乳癌においてパクリタキセルの奏効度に相関する遺伝子としてtauが報告されたが、婦人科領域の癌については報告がない。そこで本研究では1)子宮体癌の臨床検体を用いてタキサン系製剤の奏効度とTau発現の相関の有無を検討する、2)子宮体癌培養細胞を用いてtau発現の寡多によるパクリタキセル感受性への影響を検討する、ことによって子宮体癌におけるTauの臨床的意義を解析することを目的としている。1.手術目的に入院した子宮体癌患者に対し、入院時に本研究について文書を用いて説明した。研究目的の摘出組織を使用することについて学内ヒトゲノム・遺伝子解析倫理審査専門委員会の承認を得た文書により同意を得た患者において、手術時に摘出した組織の一部から子宮体癌検体を採取した。これからRNAを抽出するとともに、検体を凍結保存した。2.子宮体癌Ic期以上もしくは組織型が低分化度の症例には、当院では術後化学療法としてタキサン系製剤とプラチナ製剤によるレジメンで化学療法を施行している。上記の組織を採取できた症例で、同化学療法の奏効率とtau発現の相関について検討できるよう、症例の蓄積を開始した。3.アクチン結合蛋白であるカルポニン(CNh)に関して、婦人科癌の培養細胞にCNh1遺伝子を導入することで細胞内微小管束の発現増強、安定化が認められた。これに伴い、癌細胞では扁平・伸展化、足場非依存性増殖能の低下、細胞運動能と浸潤能の低下を認めた。腹膜中皮細胞へのCNh1遺伝子導入により、卵巣癌細胞培養上清の添加による細胞間隙の開大、培養皿からの剥離の現象が抑止された。マウスにおいて癌細胞の造腫瘍能を検討したところ、CNh1遺伝子を導入した卵巣癌細胞では腫瘍増殖能が低下していた。以上より、細胞骨格形成蛋白や微小管束を制御することで癌の進展に影響を与えることが示された。
すべて 2006
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Clin Cancer Res. 12(17)
ページ: 5216-5223