研究課題/領域番号 |
18591835
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
園田 顕三 九州大学, 大学病院, 助手 (30294929)
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研究分担者 |
宮本 新吾 福岡大学, 医学部, 講師 (40209945)
中島 学 福岡大学, 医学部, 助教授 (50198074)
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キーワード | RCAS1 / 婦人科癌 / アポトーシス / ectodomain shedding / 細胞内シグナル伝達機構 / ELISA / bioactive marker / 治療標的分子 |
研究概要 |
RCAS1は婦人科癌で高頻度に発現・分泌され、末梢血リンパ球を含む受容体発現細胞にアポトーシスを誘導する。臨床検体を用いた解析により、RCAS1発現は子宮頸癌および子宮体癌を含む計14種類の癌腫の腫瘍悪性度亢進と相関し、臨床的予後因子であることが報告されている。本年度は、(1)RCAS1分泌機構の解析、および(2)RCAS1によるアポトーシス誘導機構について解析し、RCAS1を標的とすることが婦人科癌に対する新たな治療戦略開発に繋がることを明らかにすることを本研究の目的とした。以下に本年度における研究成果を記載する。(1)RCAS1の分泌機構に関する検討:RCAS1は発現細胞のphorbol ester刺激によるPKC-δ pathway、受容体型tyrosine kinaseに増殖因子が結合することで活性化されるRas-MAPK pathway、およびG-protein coupled receptorから細胞内シグナルが誘導されるtransactivation pathwayの3種の経路を介して分泌された。さらに、これら3種の経路に対する特異的阻害剤を添加することで分泌が抑制されることから、RCAS1はectodomain sheddingにより分泌型抗原となることが明らかとなった。(2)RCAS1によるアポトーシス誘導機構に関する解析:分泌されたRCAS1をSiSo細胞上清中から精製し、RCAS1受容体発現細胞K562細胞と共培養を行うことでK562細胞にアポトーシスが誘導されるが、RCAS1を分泌しないRCAS1発現細胞MCF-7細胞とK562細胞を共培養してもアポトーシスは誘導されなかった。この結果から、RCAS1によって誘導されるアポトーシスには、RCAS1が分泌型となり受容体に結合することが必要であると考えられる。さらに、ELISA法により検討したところ、子宮頸癌、子宮体癌、卵巣癌症例では、健常者に比し有意に血清RCASI濃度は高値で、治療反応性に相関する推移を示した。K562細胞を標的としてこれらの患者血清と共培養を行ったところ、K562細胞の細胞増殖が抑制されたが、患者血清から抗RCAS1抗体を使用してRCAS1除去を行った後にはK562細胞の細胞増殖抑制効果が解除された。これらの結果から、RCAS1は子宮癌、卵巣癌の臨床的腫瘍マーカーとしての有用性を有し、血清中に存在するRCAS1が細胞増殖抑制効果を有することから、RCAS1がbioactive markerであることが明らかとなった。即ち、RCAS1が婦人科癌治療における新たな標的分子となり得ることが示唆された。
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