研究概要 |
MPAはエストロゲン欠落状態にある閉経後女性へのホルモン補充療法において、従来より子宮内膜保護の目的でエストロゲンと併用されているプロゲストーゲンである。欧米では、このホルモン補充療法において結腸癌の発生が抑制されるという多くの観察研究や大規模臨床試験において報告されている。このような背景から、大腸癌細胞をモデルに用い、MPAによる増殖抑制能を明らかにし、その機序を分子生物学的手法を用いて解明する事を本研究の目的とした。細胞数、WST-1アッセイにより、MPAはエストラジオールの有無に関係なく、大腸癌細胞株HT29,HCT116の増殖を抑制する事が明らかとなった。またAR,PRどちらをノックダウンしてもMPAによる増殖抑制能が解除された。細胞周期解析の結果、GO/G1フラクションへの集積とSフラクションの減少を認めた。MPAによりサイクリンEの発現が低下し、p21の発現が増加していた。また、p21のノックダウンではMPAによる増殖抑制効果がキャンセルされたがp27ノックダウンではキャンセルされなかった。また、免疫沈降-ウェスタンブロット法による解析の結果、cdk2とp21との結合がMPAにより増加していた。またインビトロ・キナーゼアッセイの結果、MPAによりcdk2によるRbリン酸化能が低下していた。一方cdk4のリン酸化能には変化を認めなかった。以上より、大腸癌細胞株HT29,HCT116において、MPAはAR及びPRを介してp21の発現が増加し、サイクリンEの発現低下とcdk2とp21との結合を増加させる事によりcdk2によるRbリン酸化能が低下した。その結果E2FによるS期への以降に必要な遺伝子群の転写が抑制され、GO/G1フラクションへの集積となって増殖抑制効果が発揮される可能性が示された。
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