研究概要 |
これまでに私どもは,子宮内膜症患者腹水中に高濃度に存在する細菌性エンドトキシンが,その特異的受容体であるTLR4を介して子宮内膜症の増殖に関与していることを報告してきた.今回,子宮内膜症患者の月経血あるいは腹水中の細菌性エンドトキシンの由来に関して検討した.Escherichia coli (E.coli, strain K-12,serotype,0111:B4)をLB (Lada-Bertani)培地で培養し,PGE2処理による大腸菌の増殖性の変化を検討した. 子宮内膜症患者の月経血には,非内膜症患者のそれらと比較して有意に高い濃度のE.coliが存在することを認めた.子宮内膜症患者の月経血中では,E.coliの細胞壁構成成分であるエンドトキシンも有意に高い濃度で認められた.E.coliの増殖は,種々の濃度のPGE2添加処理により,非添加処理群に比較して有意に亢進した.子宮内膜症患者の月経血中のPGE2濃度は,非子宮内膜症患者の月経血(陰性コントロール)あるいは精漿(陽性コントロール)に比較して有意に高いことが認められた.子宮内膜症および非子宮内膜症患者の末梢血からリンパ球を分離培養しPHAを添加したところ,両群で濃度依存的なリンパ球の増殖が認められた.それらにPGE2を添加したところリンパ球の増殖が抑制され,PGE2の増殖抑制作用は,子宮内膜症患者由来のリンパ球培養系でのみ認められた.子宮内膜症患者の腹水あるいは子宮内膜からマクロファージあるいは内膜間質細胞を分離培養し,その培養上清をPHA添加リンパ球培養系に添加したところ,PHAのリンパ球増殖刺激作用が有意に抑制され,これらは選択的COX2阻害剤であるNS-398の添加で消失した. 上記の結果は,子宮内膜症患者の月経血中に高濃度に存在するPGE2が,その直接的な増殖刺激作用,あるいは免疫抑制作用により間接的に月経血でのE.coliの混入を促進し,TLR4を介した細菌性エンドトキシンによる子宮内膜症の増殖・進展に関与していることが示唆された.
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