ヒト尿由来ビクニンや大豆由来ビクニン(KTI)の作用機序を解明した。ヒト卵巣癌細胞株HRAは、TGF-beta添加によりウロキナーゼを産生するが、この細胞を使ってビクニンの作用機序を示した。TGF-betaがTGF-beta receptorに結合すると自己リン酸化によりSrcが活性化され、その下流のMAPKの中のERKが主に活性化され、PI3K/Akt系のリン酸化に続いてNFるkappaBやEGR-1が核へ移動し、ウロキナーゼのmRNA産生が促進される。KTIはSrcがリン酸化されるの上流を阻害していることが判明した。シグナル伝達阻害作用作用の解明。TGF-beta刺激によりSrcがリン酸化さるが、このときKTIを前添加しておくと濃度依存性にSrcのリン酸化が阻止される。また、TGF-beta刺激によりAktのリン酸化が促進されるが、KTI前添加によりAktリン酸化が約50%抑制される。Wortmannin、LY294002、PD98059によりAktリン酸化が約90%抑制された。しかし、SB202190による抑制は受けなかった。つまり、AktやERK活性を抑制するpharmacological inhibitorsによりAktのリン酸化が抑制されるが、p38系のMAPKには影響を認めなかった。同様にPI3Kのアンチセンスを遺伝子導入するとAktのリン酸化が抑制される。さらに、KTIの作用点がSrcの上流であれば、constitutively active Src(常にSrcが活性化される)を遺伝子導入した癌細胞によるERK1/2、Aktのリン酸化やウロキナーゼ産生を抑制できないことになる。Constitutively active Srcを遺伝子導入した癌細胞ではKTIによるAktやERK1/2のリン酸化が抑制されなかった。つまり、KTIの作用点はSrcの上流であることを確認した。 以上より、大豆由来ビクニンの抗腫瘍活性、特に、抗転移作用を証明した。内服可能な薬剤として実地臨床に応用可能である。
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